未完了を解消させる
「一歩踏み出そう」「頑張ってみよう」という気概(モチベーション)を妨げているものの正体は「精神的エネルギーの低下」にあります。そして、精神的エネルギーを低下させている原因は「未完了」の蓄積です。ここでは、未完了の正体と、その未完了を解消させるにはどうすれば良いのかについてお話しします。
まずは"決める"ことが第一歩
たとえば、部屋が散らかっていて勉強に集中できなかったり、トラブル続きで急ぎの用事が手につかない、なんてことは誰もが一度は経験していると思います。
本来なら、勉強よりも先に部屋の片づけをした方が良いし、トラブルのことなどいったん脇に置いて、急ぎの用事を速攻で片付けたいところです。ですが、どうしてそれが出来ないのかというと、部屋の片づけよりも勉強の方が大事だと思うからだったり、トラブルにはすぐに対処しないといけないと思うからだったりします。
実際のところ、部屋の片づけを先にやってスッキリした方が、そのあとの勉強もはかどってトータル的に効率良く勉強を進めることができますし、急ぎの用事をさっさと片付けておいた方が、トラブルにも冷静に対処できたりもします。(※中には、何よりも優先して対処しなければならないトラブルもありますが...。)にもかかわらず、やみくもに勉強を優先したり、トラブルへの対処を慌てて進めようするのは何故なのでしょうか?
それは、部屋の片づけよりも勉強をする方が楽だと感じているからなんです。トラブルを抱えたままだと気分が晴れないからなんです。つまり、勉強よりも部屋の片づけの方がやりたくないからであり、急ぎの用事とはいえ気分良くやりたいと思っているからなんです。
このように、やらなければならない(できればやっておきたい)ことから目を背けて、頭の片隅にいつまでも居座りつづけている雑念(上記の例では「部屋の片づけ」と「急ぎの用事」)のことを未完了と言います。そして、この未完了が蓄積されると精神的なエネルギーが低下して集中力が奪われるだけでなく「一歩踏み出そう」「頑張ってみよう」という気概(モチベーション)をも失わせてしまうのです。
このことは恋愛についても同じことが言えます。たとえば、気になっている異性がいるにもかかわらず、何も行動を起こしていない場合などに当てはまります。
何も行動を起こさない理由は、もちろん「フラれるのが怖いから」でしょうけど、怖いからと言って立ち止まっているだけでは何も始まらないだけでなく、未完了を蓄積させて精神的エネルギーが低下してしまうのです。
そうならないためには、まず「本当に好きなのかどうか?」を(自問自答して)確認するところから始めなければなりません。そして「本当に好き」と分かったら、次に「告白するのか? or 告白しないのか?」を決めます。ここで「告白する」と決めたら、つづけて「今すぐ告白するのか? or 今じゃなければ、いつ告白するのか?~どこで、どのように告白するのか?」...のようにゴールまでの行動計画を具体的に決めていきます。何も行動を起こしていないということは、この「決める」という作業を、まだやっていないことを意味しています。
(※ちなみに、最初に「告白しない」と決めた場合であっても「片想いし続けるのか? or 忘れるのか?」を決めておかなければなりません。そうするたけでも、少しぐらいは未完了の蓄積を抑えることができます。)
では、どうして決めないのでしょうか?
仮に「告白する~○月○日の放課後に~屋上に呼び出して」と決めたとします。そうすると、その日までずっとドキドキしていなければいけません。こういうときのドキドキはけっして心地良いものではありません。また、もしも土壇場になって恐くて告白を中止するようなことがあれば、自分の臆病さにガッカリして、ますます自信を失ってしまいそうです(そうなりそうな予感がします...)。だから決めないんです。
(※ちなみに「告白しない~片思いし続ける」と「告白しない~忘れてしまう」と決めた場合、厳密に言えば「本当に決めた」とは言い切れません。この先どうなるか分からないわけだし、できることなら奇跡(偶然のチャンス)が起こるのを待ちたいと考えてしまうからです。)
そして、そんなことをくり返すたびに精神的エネルギーを無駄に浪費しつづけてしまうのです。
「一歩踏み出そう」「頑張ってみよう」と思うのであれば行動するしかありません。前に進むために、まずは"決める"ことが未完了を解消させる第一歩なのです。
- まず、相手を「好きなのかどうか?」をハッキリさせる。
- 好きと決まったら「告白するのか? or あきらめるのか?」行動指針を決める。
- 告白すると決めたら「今すぐ告白するのか? or 今じゃなければ、いつ告白するのか?~どこでどのように告白するのか?」具体的な行動計画を立てる。
実は、ここまでやるだけでも、とりあえず未完了が一つ解消されます。決めること自体が一つの完了でもあるからです。これだけで精神的エネルギーが少しだけアップします。そして、この未完了を解消させる作業にはつづきがあります。
- 告白すると決めたその日になって、たとえ事態が悪化していたり、状況が変わっていたとしても、決めたことは100%確実に実行すること。
これは、自分で自分にした自分との約束を守ることであり、一般的に言われる(小さな)成功体験を積み重ねることとは別のやり方で確固たる自信を身に着ける方法でもあるのです。(※詳しくはあとで説明します。)
逆に、4番の段階で、もしも(勇気が無かった等の理由で)実行できなかった場合は、ますます自信を失うことになります。
皆さんにも経験がありませんか?
やらなければならないことがあるのに、面倒くさかったりして躊躇してしまうことが...そんなとき「よし!やろう!」と決めると、妙に気分が落ち着いたり晴れ晴れすることが...でなくても「これが終わったらやろう!」「いついつになったら必ずやろう!」と決めるだけでも、少しだけ気分が落ち着いたり晴れやかになったりしませんか?
そして、実際にやり終えたあとは、本当に気分が爽快になりますよね?...好きな異性に告白する場合も、結局はこれと同じことなのです。
著者である木ノ下涼氏は、高校生のときに「やると決めたことは何があっても必ずやる」という自分ルールを決めていたそうです。
気になる女の子ができたら「告白するのか or 仲良くなるだけにとどめるのか or 何もしないで忘れるのか?」を即座に決めて「告白するならいつするのか、どんな告白をするのか、仲良くなるためにいつ話しかけるのか、どんな話しかけ方をするのか?」...などなどをすぐに決めて、その計画を100%確実に実行するようにしていました。ちなみに(何もしないで忘れる)という選択肢を選ぶことはほとんどなかったそうです。
万が一、直前で怖気づいて実行できなかったり、状況が変わって計画を後ろ向きに変更してしまったときは「敗北」と名付けて反省し、必ず反撃の計画を立て直して再チャレンジしていました。そして、再チャレンジのときは確実に実行することができました。
(※ちなみに、再々チャレンジにまで至るようなことはありませんでした。一度「敗北」したことで、不思議とモチベーションが数倍に跳ね上がるような感覚があったそうです。)
ここでもう一度未完了についてまとめておこうと思います。
「自分を変えたい」と思っていても、なかなか動き出せない最大の原因は「精神的エネルギーの低下」にあります。精神的エネルギーの低下を引き起こしている原因は、あらゆる物事に対する「未完了」です。未完了とは「やらなければいけないこと」や「やりたいこと」があるにもかかわらず「いつまでも行動指針や行動計画を決めないまま、考えないようにしている」ことです。
- 自分の欲求を明確にする。言語化する。
- やるのかやらないのか(今すぐ)決める。
- やると決めたら「今すぐやるのか?」または「いつやるのか~どこで・どのようにやるのか?」を決める。(自分と約束をする)
- 具体的な行動計画を決めたら、たとえ事態が悪化していたり、どんなに状況が変わっていたとしても、決めた日時に確実に実行する。(自分との約束を守る)
- 自分との約束を守ることを習慣化する。
一般的に、自信をつけるためには(小さな)成功体験が必要と言われますが、自信をつける方法はそれだけではありません。
自分で決めたこと=自分との約束を守ることでも自信をつけることができます。
また、自分との約束を守ることで得られる自信は、いつ・いかなるときにも揺るがない絶対的な自信になります。
さらに(小さな)成功体験から得られる自信とは違って、自分との約束を守ることで得られる自信は「自分の人生を自分で動かしている感覚」や「得体の知れない束縛から全面解放されるような感覚」を伴ないます。
物語の中では「告白するか、告白しないか」が未完了の主題(メインテーマ)になっていますが、未完了の問題は恋愛に限ったことではありません。勉強でも仕事でも部屋の掃除でも何でも同じことが言えます。やるべきこと(やりたいこと)を明確にして「今すぐやるのか~いつやるのか~どこで・どのようにやるのか?」を決めて、確実に実行に移すことが大切です。
(いきなり恋愛問題で実践するのはハードルが高い)と思うのであれば、まずは部屋の掃除など、やろうと思えば簡単にできることから始めるのも良いでしょう。たとえ小さなことでも自分との約束を守ることで、精神的エネルギーがパワーアップしていく感覚が得られるはずです。そして、それを習慣化しながら少しずつリスクの高いことにもチャレンジしていけばいいのです。
小説『蜜柑寮~キミを奪う天使とボクを救う悪魔~』は、気が弱くて自分に自信を持てなかった主人公が、未完了を解消させることで絶対的な自信を身につけて、初めての恋を成就させる物語です。著者の実体験を元にストーリー化した小説なので、理屈であれこれと難しい説明を読むよりも、すんなりと心に入ってくるはずです。